ギヨーム・ブラカヴァル(Guillaume Bracaval)
est(エスト)、シェフ・デ・キュイジーヌ
フォーシーズンズにおける職歴
- 現職(2020年より)
職歴
- キュイジーヌ ミッシェル ・トロワグロ(東京)
- レストラン タテルヨシノ 銀座(東京)
- アガペ(L’Agapé)(フランス、パリ)
- ランブロワジー(L’Ambroisie)(フランス、パリ)
- パヴィヨン・ルドワイヤン(Pavillon Ledoyen)(フランス、パリ)
- アルページュ(l’Arpège)(フランス、パリ)
- オテル・ド・クリヨン(Hôtel de Crillon)(フランス、パリ)
出身地
- フランス、レスカン
学歴
- リセ・オテリエ・ドゥ・トゥケ(Lycée Hôtelier du Touquet)(フランス)、ケータリング業者トレーニング終了
- リセ・オテリエ・ノートラデーム・デ・ラ・プロヴァンス・オーシーズ(Lycée Hôtelier Notre Dame de la Providence Orchies)(フランス)、職業バカロレア取得
- リセ・オテリエ・ノートラデーム・デ・ラ・プロヴァンス・オーシーズ(Lycée Hôtelier Notre Dame de la Providence Orchies)(フランス)、職業教育免状取得
語学
- フランス語、英語
「私が提供する料理が大きな感動と思い出をつくりだすものであってほしい」
ミシュランの星に輝く匠の技と妥協のない食材へのこだわりを持つ、フォーシーズンズホテル東京大手町のフレンチダイニングest(エスト)のシェフ、ギヨーム・ブラカヴァルの言葉です。「お持ちした時の料理の美しさはもちろんのこと、最初のひと口ではっとするような感動を提供できることを目指しています。ですから、『5年前のあの味が忘れられない』というお客さまからの言葉には、大きな喜びと達成感を覚えます」。
フランス北部の小さな村で生まれ育ったブラカヴァルは、自宅の菜園や農園に大きな影響を受けました。幼少の頃から、食材づくりに対する愛情と尊敬の念を抱き、キッチンでこねたり、混ぜたり、ローストしたり、パンや菓子を焼く母親の姿を見て喜びを感じていました。このことが彼のその後のキャリアへ導く礎となります。幼少期からの食材と料理に対する情熱は、彼をパリへと導きます。
ティーンエイジャーになったブラカヴァルは、地元のレストランでアルバイトをしたいと両親を説得しました。「今でもそうですが、特に当時は、シェフという職業は楽なものではないとされていたので、両親は、アルバイトすることで私がこの道を諦めるものだと思っていたのかもしれませんね」
そんな両親の思いとは裏腹に、ブラカヴァルは、厨房での仕事にますます熱中します。15歳になると地元の料理学校に通います。ここでの厳しい修練を経て、更に技を磨くためにパリの三ツ星レストランで見習いとして働き始め、アラン・パッサール(Alain Passard)、クリスチャン・ル・スケー(Christian Le Squer)、ベルナール・パコー(Bernard Pacaud)など錚々たるシェフのもとで腕を磨きます。その後、2009年にミシュラン一つ星レストラン、アガペ(L’Agapé)のシェフの座に就き、新鮮な食材を用いた月ごとのメニューを考案するようになります。そして2012年、ミッシェル・トロワグロ(Michel Troisgros)に東京でミシュランの星を獲得しているレストランのエグゼクティブシェフのポストにスカウトされ、柑橘類、ビネガー、オリーブオイル、ハーブやスパイスを巧妙に用いた素材本来の味を引き出す料理で名を馳せることとなります。
そして今日、ブラカヴァルは、フォーシーズンズホテル東京大手町のest で、日本のテロワール(産地)の食材に対する深い尊敬のもとにインスパイアされた革新的なフレンチを提供しています。
「私は田舎で育ったため、(食材の)ファーム・トゥ・プレート(農場から食卓まで)という概念をよく理解しています。私たちは最上の食材をつくる地元の生産者の協力のもと、旬の食材を中心としたメニューづくりをしています」。ブラカヴァルは、自ら日本各地を訪ね、九州の漁師が捕ったばかりの新鮮な魚、和歌山の農園が育てる50種以上の柑橘類など、厨房で扱う食材の調達に妥協を許しません。
est のメニューは、海の幸と山の幸をふんだんに使用し、フレンチのテクニックと日本の職人技を見事に融合して仕上げられています。「例えば、スープストックとして出汁を使ったり、寿司のネタのように魚の下ごしらえをしたり、フランスで学んだことを基本にして、日本から受けた影響を重ね合わせています」
料理はすべてにおいて濃厚過ぎず、「こってりし過ぎないようにクリームやバターの量を調整」したミニマルなスタイルで提供されています。店内はオープンキッチンとなっているので、ブラカヴァル率いるチームの仕事ぶりを見ながら会話にも花が咲くなど、「活気があり親しみやすい、一味違ったファインダイニング」です。オープンテラスでは、東京のパノラミックビューを眺めながらお酒をお楽しみいただけます。
「仕事がオフの時に、妻と幼い2人の娘と過ごす時間がなにより幸せです」と言うブラカヴァルは、自らの子供時代に体験した自然との調和の機会を娘たちにも与えたいと、都内近郊の公園や動物園、牧場へと連れ出しています。家族思いのブラカヴァルですが、料理のことが頭から離れることはなく、そういった時間にも常にインスピレーションを求めています。「優れたシェフには、芸術家のような思考が必要です。マーケットにいてもラーメンショップにいても、あるいは妻がつくる日本の家庭料理からも、ちょっとしたひらめきを得ることができます」。ブラカヴァルは、食の巨匠と呼ばれる現在においても日々の学びを大切にしているのです。