ミケーレ・アッバテマルコ(Michele Abbatemarco)
est(エスト)、ペストリー シェフ
フォーシーズンズにおける職歴
- 2020年より、フォーシーズンズホテル東京大手町
職歴
- キュイジーヌミッシェル ・トロワグロ(東京)
- アンティカ・オステリア・デル・ポンテ(東京)
- アンティカ・オステリア・デル・ポンテ(フランス、カッシネッタ・ディ・ルガニャーノ)
- ロカンダ・デル・サンウフィッツィオ(イタリア、チョッカロ)
- ルカ・カルトン(フランス、パリ)
- グアルティエロ・マルケージ(イタリア、エルブスコ)
- カフェドパリ(モナコ、モンテカルコ)
- ホテル・ネグレスコ内、シャントゥクレール(フランス、ニース)
受賞歴
- 「ゴ・エ・ミヨ2024」ベストパティシエ賞
出身地
- イタリア、モンフェッラート
学歴
- エコール デュ グラン ショコラ ヴァローナ、ペストリー専攻(フランス、タン・レルミタージュ)
- エコール・ルノートル、ペストリー専攻(フランス、パリ)
- Instituto Alberghiero Nuovi Ambasciatori、料理芸術のディプロマ取得(イタリア、トリノ)
語学
- イタリア語、フランス語、日本語
イタリア北部ピエモンテ州モンフェッラートの活気あるマーケットからヨーロッパや日本でミシュランの星を獲得している一流のレストランまで、幼少期の頃より興味のつきない食の旅を続けてきたペストリーシェフのミシェル・アッバテマルコ。
「私は田舎育ちですから、地元の旬の食材の真の価値というものについてよく理解しています。祖父に連れられて、地元のマーケットに度々行きました。祖父はそのマーケットの常連客で、どの店主とも親しい関係を築いていましたから、いろんなお店で味見をさせてもらったり、食材について教えてもらったりすることができました。幼い頃からのこういった経験が、私の味覚を鍛え高めてくれたのだと思います」
そもそも食べ物に興味のあったアッバテマルコですが、ある時地元のレストランで手にしたミシュランガイドが彼に新しい目を開かせます。素晴らしいシェフとは芸術家なのだと、認識させられたのです。母なる自然こそが彼にとってのミューズ(智の女神)であり、そして地元の丘陵に富んだ風景や赤色を帯びていている大地からインスピレーションを得るようになります。「自然から恩恵を受ける中で、絵画や彫刻、建築といった芸術にも目を向けるようになりました。料理に美しさをもたらすこと、そして様々な形や色、食感の組み合わせをいろいろと試みることが好きです」。
アッバテマルコは、最高の食材と向き合う彼の自由奔放な想像力と情熱を、フォーシーズンズホテル東京大手町の革新的なフレンチレストランestに注いでいます。パティセリーとはまず、デザイン。彼が創り上げる一つひとつのデザートは、精密にデコレーションされた驚くような小さなアート作品なのです。お皿が空っぽになってからも、それを食べた人の心に残るような作品を目指しているのです。「味わうとは、味覚について綴られた一篇の詩のようなもの。芸術と同じように、一皿からも感動を得ることができるのです。口にした時の気持ちが長く続く思い出となったときにまさに、私の仕事が完成するのです」。
興味深いのは、イタリアの料理学校を卒業したアッバテマルコが、ペストリーづくりという専門分野に目を向けたことです。パリのルカ・カルトン(ミシュラン3つ星)では、料理界の巨匠、アラン・サンドランス シェフの下で、『美食の最高の表現』を学びます。その後、様々なフレンチペストリーの店を訪ねては名立たるシェフと出会い、自らのイマジネーションと腕を磨いていきます。そして、アンティカ・オステリア・デル・ポンテ(ミシュラン2つ星)のペストリーシェフとして本国イタリアに戻ると、幼少期や若き日の学びを活かし、フランス式の厳格さとイタリアの厳選した素材を融合していきます。2005年、同レストランの東京店に移ると、その後、やはり東京のキュイジーヌミッシェル ・トロワグロでもペストリーシェフを務めました。
アッバテマルコのペストリーは明らかにヨーロッパスタイルですが、日本の生活からも大きな影響を受けています。長年に渡って日本の食材を研究し、日本文化を学び、オリジナルのレシピをアレンジし続けています。「四季、そしてそれを表す色彩を意識するようになりました。重すぎず、バランスの取れた一品を目指しています。そして、それに伴う素晴らしい食材を見つけました」。新鮮なフルーツはもちろんのこと、和三盆、ぎゅうひ、寒天を始めとする、国内の小さな農家が生産しているプレミアムな食材を使用し、七十二候を表現した独創的な「作品」を創り上げています。
estでは、デザートとは食事の一部であると考えます。アッバテマルコは、シェフのギヨーム・ブラカヴァルのつくる四季折々のコースメニューの考案を手伝い、また新しいアイディを共有し、料理のプロセスにも協力しています。
「私たちは、ここ東京で、最初から最後まですべての料理が調和している、そういった美食家にとっての基準となるような格別な食の機会を提供しています」。そして、彼のパティセリーキッチンから運ばれてくる料理といえば、「何よりも大切なこと、それは、目を喜ばせるだけではありません、美味しいということ」なのです。